手軽な料金と朝方まで遊べるということでガールズバーと言われるお店が数多くあります。
自分もお店をやってみようと考えている方も多く、当事務所にもガールズバー開業するための手続きについてお問い合わせをいただきます。
数年前のガールズバー全盛期には繁華街はガールズバーだらけでした。なぜそんなに増えたのでしょう?
その理由は、先程述べたように料金の安さと朝方まで女の子とお話できるお店だったからです。この「女の子とお話できる」というところが大きなポイントです。
それまでは、女性と会話を楽しみながらお酒を飲むのはキャバクラ(もしくはキャバレー)だけでした。
しかし料金が高め設定のキャバクラは、気軽に遊びに行けない。そんな環境のなかに誕生したのがガールズバーです。
カウンター越しの女性バーテンダーさんが給仕してくれるお酒を飲めて、ちょっと会話も楽しめるお店としてガールズバーはとても新鮮でした。
営業者さんにしてみても、飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出だけですぐに営業をスタートできるのも魅力的だったのでしょう。
しかし、本来の深夜酒類提供飲食店営業届出は、お酒をメインに提供する店舗として深夜帯(夜中の0時~朝方5時)に営業をしますよ!という手続きです。従業員が接待行為をすることはできません。
「お酒を出すついでにちょっと会話をしているだけで、接待ではありません!」というのが営業者さんの言い分でしょう。
利用するお客様にも、営業者さんにとってもメリットが多かったガールズバーですが、最近は大きく変わって来ているようです。
目次
ガールズバーでもキャバクラと同じ風俗営業許可が必要なケースも
もちろん全てのガールズバーがキャバクラ同様に接待ができる風俗営業許可が必要となるわけではありません。
女性バーテンダーさんが在籍しているカウンターバーだって沢山ありますから。
ここで問題となるのは、会話優先でお酒を給仕しているかどうか。接待行為じゃなさそうなグレーゾーンを狙った営業スタイルです。
いままでは、警察署や公安委員会もガールズバーの取扱には困惑していたようです。するとガールズバーをめがけて立ち入りをして、実際の営業スタイルを確認しようとするわけです。
その時に接待行為が現認されれば取締対象となります。
こうなると最悪の場合は、無許可営業をしたということで風営法違反となり2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(併科あり)が科せられる可能性があります。
ガールズバーで女性バーテンダーがカウンターから出ていないからとか、立ち話しているだけだから接待じゃないという説明も効果はありません。
警察側は全て接待と見なして立ち入り及び取締をしています。
ガールズバーと風営法における接待行為との関係
そもそも接待行為とは、どんな営業スタイルをさしているのか?と疑問に思われる方も多いと思います。
風営法は正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という名称で、さらに風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の解釈運用基準という3段構えの構図となっています。
接待行為の細かい内容については風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の解釈運用基準に記載されています。
接待行為の定義
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。
この歓楽的雰囲気とは、お客さんの恋心や下心をくすぐるような会話や接客するスタイルを指していると考えるとわかりやすいでしょう。
つまりキャバクラとかホストクラブのようにアフター狙いや、あわよくば彼氏彼女になれるかも?なんて期待をもたせるような接客をしたいなら風俗営業許可第1号営業(社交飲食店)が必要となるわけです。
接待行為を行う側については、お店のスタッフが該当することは当然として、外部の派遣業者に委託した芸者さんやホステスさんも接待行為の主体となります。
また、接待行為をするのは通常は異性によることが多いですが、それに限られるものではありません。つまりゲイバーのような男性同士であっても接待行為とされます。
接待行為の判断基準
歓楽的雰囲気を醸し出してしまう接待行為ってどんなことが当てはまるのか?お店ではどこまでが接客でどこからが接待になるのかと気になるところです。
それでは具体的にはどんな行為が接待とされるのかを細かく見ていきましょう。
(1) 談笑・お酌等
この談笑とお酌がガールズバーにおいてもっとも注目されるポイントでしょう。当事務所へのガールズバーの届出に関するお問い合わせの中でも「カウンター越しで、そこから出なければ接待行為じゃない。横に座ったら接待になる」という内容が非常に多いです。
お客さんからの注文に応じてお酌をしたり水割りを作るけど速やかにその場を立ち去る。又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけで、社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たりません。
しかし、カウンター越しであっても特定少数のお客さんとずっと談笑したりお酌をしていれば接待行為となってしまいます。
これに対して、ガールズバーの経営者さんは「じゃあ何分ぐらい会話したら接待行為になるのか?」と考えるでしょう。何分間会話したら接待になるからと、お店独自に◯分間ルールを設けてお客の前から離れたり付いたりするのは考えにくいです。会話をする長さではなく、その会話の内容に気を使うべきです。
男性客がカウンター内で待機している女性スタッフにお酒を注文したとします。お酒を出してくれた時に「ありがとう」とか「今日は暑かったね」程度の挨拶を交わすだけなら問題ありません。そこから更に女性スタッフのプライベートなところまで会話の内容が進むとすれば談笑にあたり、接待行為に踏み込んでいると思っていいでしょう。この場合、男性客の心理として「この女の子と連絡先を交換して仲良くなりたい」という部分があるからです。そして、そういった雰囲気を醸し出すように会話をしていたとすると間違いなく接待行為となります。
(2) ショー等
ガールズバーでショーを行うといういことは無いとは思いますが、接待行為の一つとしてショーを見せるというのがあります。
特定少数のお客さんに対して、ショーや歌、踊り等を見せたり聴かせる行為は接待に当たります。これに対して、ホテルのディナーショー接待には当たらないとされています。
(3) 歌唱等
カラオケ機器を設置しているガールズバーも多いでしょう。お客さんから言われてカラオケ機器を操作したり、お客さんが勝手に歌うだけであれば接待にはなりません。そのためカラオケバーは接待に当たらないので風俗営業許可は不要ということになります。
しかし、特定少数のお客さんに歌うことを勧めたり、必要以上に拍手するような誉めはやす、お客さんとお店のスタッフがデュエットするのは接待行為となります。
ガールズバーの性質上、女性スタッフとの会話を楽しみにやって来るお客さんからデュエットしようと誘われたら断るのは難しいかもしれません。しかし、風俗営業許可を取らずに深夜酒類提供飲食店営業届出だけで営業しているのであれば、お客さんからのデュエットの誘いは断らなくてはなりません。
(4) ダンス
ダンスについてもガールズバーの営業スタイルとしては、少ないと思いますが、参考まで。
特定のお客のさんを相手となって、体を接触してダンスをさせる行為は接待に当たります。また、お客さんの身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、そのお客さんと一緒に踊る行為も接待となります。
(5) 遊戯等
特定少数のお客さんと一緒に、ビンゴやパターゲーム等の遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待になります。お客さん一人で又はお客さん同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たりません。
(6) その他(スキンシップ等)
社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たりません。また、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、お客さんの荷物、コート等を預かる行為等も接待となりません。
お客と身体を密着させたり、手を握る等、お客さんの身体を触る行為は、接待に当たる。また、お客さんの口許まで飲食物を差出し、食べさせてあげるということも接待行為となります。
ガールズバーでもキャバクラと同じ風俗営業許可を取る店が増えています
風営法における接待行為を見ていくと、ガールズバーの営業者さんは「もしかして接待しているかも?」と驚いている方もいらっしゃるでしょう。
実際に警察署からの立ち入りをされてしまったガールズバーの営業者さんからの問い合わせも多くあります。
その立ち入りの際に接待行為を確認され、警察署から直ちに風俗営業許可を取るように指導されたというのです。本来であれば無許可営業として摘発されるようなケースですが、警察側の温情によって罰則を受けなかったのであれば非常に運が良かったと言わざるをえません。
ガールズバーに限らず、ママさんが1人で経営していたスナックも接待行為を確認されて風俗営業許可を新規で申請するというケースもあります。
ガールズバーやスナックだから深夜酒類提供飲食店営業の届出だけで大丈夫というのは、もはや通用しません。お店の営業スタイルを今一度確認し、それが接待に当たると思われるのであれば、すぐにでも風俗営業許可を取得するべきです。
深夜酒類提供飲食店営業から風俗営業許可への切り替えについて警察署へ事前の確認や相談をしたときにも、所轄警察署からは「行政書士の先生がついてしっかり許可申請してくれると安心」という言葉も聞かれます。これは、警察としても日頃からガールズバーへの立ち入りも多く行っている結果、無許可営業にもかかわらず接待をしているお店が後を絶たなくて困っているという気持ちの現われでしょう。
当事務所へガールズバーの届出についてご依頼頂いた場合には、そのお店の営業スタイルについてヒヤリングさせていただきます。そのうえで、それが接待に当たるとなればキャバクラと同じ風俗営業許可(社交飲食店)の申請に切り替えて頂くようご提案しています。
風営法を守ってガールズバーやキャバクラを営業することは、ご自身の身を守り、そして女性キャストや従業員を守ることにも繋がります。